筑前たなか油屋の想い
昭和63年10月のある日のこと。油に配達で九州一円を駆け回っていた四代目が工場に戻ると、近所に住む一人のお母さんに声掛けられました。「子供が生まれつきアトピーとアレルギー持ちなんです。」野菜を食べさせたいけどスーパーではドレッシングを選べません。子供の体に合わないんです。安心して使える美味しいドレッシングを作ってもらいたい。そのお母さんの必死の表情と、我が子への愛情に胸を打たれ、四代目はその場で答えました。「わかりました、やってみます」子を想う母の一言です。
四代目には、一つの決意がありました。「先代を裏切らない、油屋にしかできないドレッシングを作る」それは、全くの未知の世界でもありました。仕事終わるとそのまま自宅の台所に篭り、母に手伝ってもらいながらの試作づくり。材料を集め、組み合わせを作り、油と合わせる。試作ができると、近所のお母さん達に配り、味を確かめてもらいました。作っては、配って意見を持ち帰ってはまた新しい配合で作る。その繰り返しです。そうして、数えきれないテストを重ね、ようやく納得のいく味に仕上がった時、すでに開発から1年が過ぎようとしていました。
お母さん達に太鼓判を押されたドレッシングは、昭和64年10月28日、「ちくし村ドレッシング」として発売されることになりました。ちくし村とは、筑前たなか油屋の生まれた地であり、かつて「筑紫村」であった故郷を忘れないために、祖父・弥四郎がその名をつけました。「子を想う母の一言」から生まれた、ちくし村ドレッシングは発売から30年を経て、現在も全て手作業による昔ながらの製法です。小さなお子様のいらっしゃる食卓にも、安心して並べられるドレッシングとして、これからも変わらない「美味しさ」をお届けしていきます。